結論「オーストラリアでは治療費用400万円は欲しい」

先に結論を書いておきたいと思います。

のむてつ所長のむてつ所長

オーストラリアでは「疾病治療費用」「傷害治療費用」の補償額は、それぞれ最低400万円は欲しいところ。800万円なら安心です。あと注意したいのは、医療費が高額になる医療搬送が必要となったとき(オーストラリア⇒日本は約581万〜1600万円)。重病時に医療搬送を必要とするかどうかで、必要な「救援者費用」の額が変わります。(下で詳しく説明します)。

このページの目的

海外旅行保険は、本当に1年で20万円以上もする「支払い無制限」のものが必要なのでしょうか?短期の保険なら、本当に、クレジットカード付帯の保険だけでは不足するのでしょうか?

このページでは、オーストラリアの医療費の価格を実際に見て、海外旅行保険をどれくらい掛けておく必要があるか、クレジットカード付帯保険なら、どれくらい不足するのか、ということについて考えてみます。

※東京海上やAIU、JI傷害火災、HS損保などの保険会社が公表しているデータから、できるだけ客観的に見ていきたいと思います。(記事下に、すべての出典リンクを掲載)

まず大前提として

海外旅行保険を考えるときに、まず大前提として2点、頭に入れておいてください。

海外旅行保険の額を考えるときの大前提2つ

  1. 一番使う確率が高いのは「治療費用」。この額をメインに考えるべき。
  2. 高額医療費の原因のほとんどが医療搬送。なので「救援者費用」の額も重要

クレジットカードの宣伝でよくある「最大補償額●千万円!」というのは、実は利用確率の低い死亡補償の額だったりします。最大補償額が大きくても、あまり意味がありません。保険額を決めるのに重要なのは、「治療費用」と「救援者費用」です。覚えておいてくださいね。

判断基準

治療費用に関して↓

オーストラリアで盲腸手術:約90万円

  • 全体的に、日本の約1.5倍の額の医療費(日本の10割負担額と比較)
  • 集中治療室(ICU/CCU)の額: 約10万円/日(*4*5)⇒20日間200万円

救援者費用に関して↓

医療搬送イメージ

  • 日本への医療搬送(定期便): 約581万円(*4)
  • 日本への医療搬送(チャーター便): 約1600万円(*8)

オーストラリアの医療費の価格&実際の事例

盲腸(虫垂炎)手術費用は総額約90万円

盲腸手術の費用データ

・35万円(手術代のみ。シドニー、公立病院、2013年*4)
・43万円(手術代のみ。シドニー、私立病院、2013年*4)
・102万円(手術代のみ。シドニー、2009年*5)
・86万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。シドニー、2008年*6)
・86万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。ゴールドコースト、2008年*6)
・102万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。ゴールドコースト、2008年*2)
・41万〜100万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。パース、2008年*2)

のむてつ所長のむてつ所長

ちなみに日本の医療費は↓こんな感じ。
●盲腸手術:総額約60万円
●個室入院:一日3〜10万円
●ICU入院:一日8〜10万円
(出典2008年*2)

入院時の部屋代は個室1日8万円

病院の部屋代(1日あたり)
・セミ個室8万円(シドニー、公立病院/私立病院同額。2013年*4)
・セミ個室8万円(シドニー、公立病院/私立病院同額。2009年*5)

 ※薬代、X線代、検査費は含まず

集中治療室(ICU/CCU)は、1日10万円

集中治療室(ICU/CCU)の費用データ(1日の価格)
・10万円(シドニー、公立病院/私立病院同額。2013年*4)
・10万円(シドニー、公立病院/私立病院同額。2013年*4)

その他の治療費用のデータと事例

少し医者に診てもらうだけで、数万円はかかると思ったほうが良さそうです。

胃腸炎での外来初診料(2013年*4) 2.5万円
救急車の基本料金(50kmまで)(2008年*2) 9万円
入院保証金(2013年*4) 不要
アキレス腱断裂の手術費用(2013年*4) 公立病院
35万円
私立病院
43万円
骨折手術費(橈骨末端閉鎖性骨折)(2008年*2) ゴールドコースト
4万円
パース
5~6万円
横断歩道で転倒し、腕を骨折。現地病院で受診し、帰国後180日間通院。治療費用・帰国後の治療費用が発生。(年不明*7) 20万円
二段ベッドの上の段から転落し頭を殴打したため、現地病院で受診し治療費用が発生。(年不明*7) 18万円
ホテルの玄関で転び、顎を強打。現地病院で受診した。治療費用が発生。(年不明*7) 6万円

高額な事例(医療搬送を含まないもの)

事故状況(年度・出典) 保険金支払額
転倒の4日後に意識障害。救急車搬送。硬膜下血腫の診断。34日間入院・手術。家族が駆けつける。(2013年*1) 712万円
木から落下。手首・肘骨折。10日間入院・手術。家族が駆けつける。(2010年*1) 611万円
意識を失う。一過性脳虚血発作の診断。10日間入院。家族が駆けつける。(2013年*1) 427万円
高熱で受診。アメーバ赤痢による肝膿瘍。15日間入院。家族が駆けつける。(2014年*1) 393万円
入浴中に嘔吐、失神。敗血症。9日間入院。家族が駆けつける。(2007年*1) 350万円
精神的に不安定になり救急車搬送。統合失調症の診断。16日間入院。家族が駆けつける。(2014年*1) 316万円
転倒。大腿骨頸部骨折。7日間入院・手術。家族が駆けつける。(2010年*1) 300万円

以上のデータを見て、オーストラリアで治療費用は最低400万円、800万円あると安心、という判断をしました。

しかし、上記は、あくまで医療搬送が絡まないデータ。医療搬送が必要になったときの費用を、↓次に見てみましょう。

オーストラリアから日本へ移送費&実際の事例

医療搬送チャーター機イメージ

チャーター機での医療搬送は、1時間につき約80万円かかる*8

↓飛行機での医療搬送は、定期便か、チャーター便かで、かなり価格が変わります。

定期便利用の場合

合計 約581万円
(2013年*4)
・付き添い医師1名、看護師1名
・座席を6~10席確保し、ストレッチャー利用
・定期便のメリットは、安いこと。
・デメリットは断られることもあること(感染症の疑いや、繁忙期など)

チャーター便利用の場合

合計 約1,600万円
・チャーター費用 約1500万円(2011年*8)
・その他費用 約100万円
(その他費用の内訳)付添い医師1日20~40万円、付添い看護師1日約10万円、医療機材4万円、現地病院〜空港の車移送3~5万円、宿泊費用(遠路の場合)1人1泊1.5万円(以上、2009年*5)、成田空港〜都内病院の車移送 10~25万円(2013年*9)

・チャーター便のメリットは断られないこと。デメリットは高額であること。

オーストラリアから日本への医療搬送の事例

事故状況(年度・出典) 保険金支払額
スノーボードのジャンプで着地に失敗。ヘリコプター搬送。腰椎骨折・脊髄損傷。16日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2012年*1) 1,461万円
激しい頭痛と吐き気。救急車搬送。クモ膜下出血。12日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2012年*1) 1,251万円
転倒し腰を強打。大腿骨頸部骨折。12日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2013年*1) 388万円
腰の痛み。椎間板ヘルニアの診断。9日間入院。家族が駆けつける。医師が付き添い医療搬送。(2011年*1) 350万円
パラグライダー着地時に転倒。腰椎骨折。12日間入院。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2010年*1) 321万円
転倒。大腿骨骨折。8日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2008年*1) 312万円

↑これらのデータを見ても、医療搬送が約600万円とすると、治療費用だけなら800万円あれば十分なのがわかると思います。

以上が、医療搬送のデータです。ただし、この医療搬送、利用するかどうかは自分で選べます。「医療搬送は自分には不要」と割り切れば、海外旅行保険の保険料の大幅に節約できます。

医療搬送が必要かどうかの判断=大幅な節約

定期便で約600万、チャーター便だと約1600万もかかる医療搬送。これは必ず必要なものなのでしょうか?

保険代理店に尋ねてみたところ「もちろん医療搬送も、やるかどうかは自分の判断(家族判断)になります」とのこと。では、医療搬送を希望する人というのは、どういう人で、どういう理由で希望するのでしょうか?

医療搬送はシニア層(65歳以上)が多い

ジェイアイ傷害火災が発表しているデータ(出典)によると、こんな事実が判明しています。

  • 300万円超の高額医療事故はシニア層(65歳以上)が約半数である
  • 2014年度 高額医療事故TOP5のうち4件がシニア(9,335万円〜1,888万円)

また、ジェイアイ傷害火災とエイチ・エス損保が公開している500件以上の事故事例(*1*7)を一つ一つ調査したところ、↓このような事実もわかってきました。

  • 1000万円超の高額医療事故73件のうち61件(84%)が医療搬送。
  • 医療搬送を病気に限定すると、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞など、シニアに起こりやすい病気が多い。

このように見ていくと、シニア層(65歳以上)であるかどうかによって、医療搬送の可能性は、かなり違うことがわかると思います。65歳未満の場合は、医療搬送の可能性は、かなり低いと言えると思います。

また、逆の面から見ると、医療搬送は本人(家族)の希望で行うものであることから、「シニア層が医療搬送を希望することが多い」とも言えます。

医療搬送を希望する人は、どういう理由で希望するのか?

本人(もしくは家族)の希望で行う医療搬送。日本への医療搬送を希望する理由は、どういうものなのでしょうか?調べてみたところ、3つの理由に集約できました。

日本への医療搬送を希望する人の3つの理由
1. コミュニケーションの不安
2. 現地の医療水準が不安
3. 金銭的な不安

↑これら3つの不安をクリアできるなら、保険料の節約のために「医療搬送は不要」と割りきってよいことになりますね。

「医療搬送は不要」と割りきったとき、どうすべきか

では、今度は、重要な、「高額な医療搬送を断るなら、どう対応したらいいか」という問題を考えてみましょう。上記の3つの不安それぞれに対して考えてみます。

1. 「コミュニケーションの不安」への対策

これに関しては、日本の海外旅行保険は通訳費用も負担してくれるので安心です。通訳がいれば、最低限の意思疎通は問題ないでしょう。日本と同レベルの「かゆいところに手が届く」ほどのサービスは望めないかもしれませんが、それは仕方ないと割り切るしかないでしょう。

2. 「現地の医療水準が不安」への対策

ここ最近、日本以外の国の医療水準は、急速に上がってきています。さらに言えば、ほとんどの国に、外国人や富裕層向けの、高額だが医療水準の高い「ビジネス病院」があるものです。海外旅行保険に加入している日本人旅行者は、ほとんど、こういう病院を利用することになります。ですので、現地の医療水準を、国全体や、その地域全体で考えてはいけません。

とは言っても、オーストラリアは国全体からしても医療水準は高いです。外務省の海外安全ホームページにも、↓このように書かれています。

オーストラリア内の主要都市では医療機関が発達しており、日本のレベルと比較しても遜色ありません。ドクター・ヘリ等救急医療体制もしっかりとしています。一方、地域によっては、医療費が高額な所もありますので、海外旅行保険への加入をおすすめします。

バンコクの医療関係者の方で、医療搬送にも携わり、医療搬送の難しさと高額さをよく知っている方が、ブログ(2013年の記事)中で、↓こう書かれています。

そろそろ海外で罹災した日本人患者は何でもかんでも日本の医療機関だけを妄信するのはやめたほうがいいのでは?と言わせていただきます。韓国、バンコク、シンガポール、マレーシアのビジネス病院のレベルは、日本の総合病院と医療レベルにおいて遜色はなくなっていますし、サービスレベルで行くと日本よりもはや上になっています。数年すると中国、インドネシア、インドなども肩を並べてくるでしょう(国全体の医療レベル比較ではなくあくまでもビジネス医療サービスを提供している医療機関の話です)。従いまして、もし海外で不幸にも病気や怪我をした場合は、現地でも十分対応できる医療機関があるかもしれないことを考て、そこからどこでどのように治療計画を立てるか柔軟に対応するのが肝要かと思います。

ですので、オーストラリアなら、医療搬送ではなく、現地で治療を続けるという選択肢もアリかと、私は考えます。

3. 「金銭的な不安」への対策

金銭的な不安というのは、具体的には、例えば、「集中治療室の費用が一日数十万円かかるので支払いが大変。医療搬送の費用を払ってでも、早く保険の利く日本で治療を受けたい」というような場合です。

これに対しては、また先程のバンコクの医療関係者の方のブログが参考になります。

日本以外の多くの国では、医療機関ごとに医療レベルの差、病院費用の差が存在しますので、患者や家族がどのレベルの病院で治療を受けるかという選択をしなければならなくなることがあります。

つまり、簡単に言えば、「病院のレベルを下げれば医療費も下げられる」ということです。高級ホテルのような病院をやめて、地元の人も利用するような普通の病院を利用するだけで、かなりの節約になるはずです。

以上、3つの対策でした。

上の3つの対策を読んで、自分もできそうなら、「医療搬送必要なし」と割り切ることができるでしょう。無理そうなら、医療搬送になった場合も計算に入れて「救援者費用」の項目を多めに準備するようにしてください。

まとめ

オーストラリアへ行くときの海外旅行保険は、

  • 治療費用は最低400万円。800万円なら安心。
  • 救援者費用は、
    • 「日本への医療搬送は不要」と割り切るなら200万円
    • 「日本への医療搬送はチャーター便はあきらめて定期便のみ」と割り切るなら600万円
    • 日本への医療搬送を万全にするなら1600万円

医療搬送が不要の場合、救援者費用は200万円でいいでしょう。これは年会費無料クレジットカード1枚でカバーできる額です。

医療搬送を必要とした場合は、救援者費用は600万円以上必要。1600万円以上ないと医療搬送でチャーター便は使えません。この額だと、有料の海外旅行保険が必要になってきます。

保険の節約のコツとしては、治療費用400万円なら年会費無料のクレジットカード2枚の合計でカバーできるレベルです。カード付帯保険は死亡補償以外の項目は、複数枚もっているときは補償限度額を上乗せできるからです。3枚準備して600万円というのもアリだと思います。(参考:海外旅行保険付帯カード比較表)

また、少しお金はかかりますが、保険を充実させたい場合は、カード付帯保険と有料保険を併用する、という方法もオススメです。有料保険の併用に関しては、コチラの記事で詳しく書いています。⇒海外旅行保険フリープラン(バラ掛け)比較ランキング

ただし、注意点としては、カード付帯保険は90日間が最長ということです。3ヶ月以上の場合は、別の節約方法が必要になります。こちらの記事にまとめています。⇒半年〜1年など長期海外旅行保険の節約方法3つ

参考にさせていただいた文献リスト

保険会社の皆様、貴重なデータの公表、ありがとうございました!
*1 ジェイアイ傷害火災HP 海外での事故例(2002~2014年)
*2 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2008年のデータ)
*3 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2004年のデータ)
*4 東京海上日動 世界の医療と安全2014年
*5 東京海上日動 世界の医療と安全2010年
*6 AIU 海外での盲腸手術の総費用2008年(AIU海外留学保険総合案内サイト)
*7 エイチ・エス損保 旅行先でのトラブル事例
*8 チャーター機の料金は、アークEFI航空情報センター 航空機チャーター事業部(参考料金一覧)を参考に「1時間80万円×2(往復)×日本までの飛行時間(google mapより)」で計算。
*9 ④搬送費用 先端医療情報サイト ハロードクター

参考為替レート

現在の為替レート:1豪ドル=failed円 (←googleからの自動取得値)

2013年 1豪ドル=約86~105円
2009年9月7日 1豪ドル=79.4円
2008年2月 1豪ドル=約85~89円
2004年3月 1豪ドル=約80円