結論「スイスでは治療費用600万円は必要」

先に結論を書いておきたいと思います。

のむてつ所長のむてつ所長

スイスでは「疾病治療費用」「傷害治療費用」の補償額は、最低で600万円は欲しいところ。あと注意したいのは、医療費が高額になる医療搬送が必要となったとき(スイス⇒日本は約450万円)。重病時に医療搬送を必要とするかどうかで、必要な「救援者費用」の額が変わります。(下で詳しく説明します)。

このページの目的

海外旅行保険は、本当に1年で20万円以上もする「保険金支無制限」のものが必要なのでしょうか?短期の保険なら、本当に、クレジットカード付帯の保険だけでは不足するのでしょうか?

このページでは、スイスの医療費の価格を実際に見て、海外旅行保険をどれくらい掛けておく必要があるか、クレジットカード付帯保険で対応可能なのか、それとも不足するのか、などについて検証します。

※東京海上日動やAIU、JI(ジェイアイ)傷害火災、HS損保などの保険会社が公表しているデータから、できるだけ客観的に見ていきたいと思います。(記事下に、すべての出典リンクを掲載)

まず大前提として

海外旅行保険を考えるときに、まず大前提として2点、頭に入れておいてください。

海外旅行保険の額を考えるときの大前提2つ

  1. 一番使う確率が高いのは「治療費用」。この額をメインに考えるべき。
  2. 高額医療費の原因のほとんどが医療搬送。なので「救援者費用」の額も重要

クレジットカードの宣伝でよくある「最大補償額●千万円!」というのは、実は利用確率の低い死亡補償の額だったりします。最大補償額が大きくても、あまり意味がありません。保険額を決めるのに重要なのは、「治療費用」と「救援者費用」です。覚えておいてくださいね。

判断基準

治療費用に関して↓

スイスで盲腸手術:約50〜90万円

  • 日本と同じ〜1.5倍の医療費(日本の10割負担額と比較)
  • 集中治療室(ICU/CCU)の額: 20万円/日(*4*5)⇒20日間400万円
  • 病院の1日の部屋代: 個室3万円/日(私立、公立ともに)(*4*5)⇒20日間60万円

救援者費用に関して↓

医療搬送イメージ

  • 日本への医療搬送(定期便): 約450万円(*4*5)
  • 日本への医療搬送(チャーター便): 約2160万円(*8)
    ↑ヨーロッパからはチャーター便はほとんど使われていない

スイスの医療費の価格&実際の事例

盲腸(虫垂炎)手術費用は総額約50〜90万円

盲腸手術の費用データ

・30万円(チューリッヒ、2014年、下の体験談より)
・19万円(ジュネーブ、手術代のみ。公立病院、2013年*4)
・50万円(ジュネーブ、手術代のみ。私立病院、2013年*4)
・27万円(ジュネーブ、手術代のみ。公立病院、2009年*5)
・67万円(ジュネーブ、手術代のみ。私立病院、2009年*5)
・297万円(ジュネーブ、病室代/看護費用/技術料など総費用。2008年*6)
・135万円(ジュネーブ、病室代/看護費用/技術料など総費用。2004年*3)

のむてつ所長のむてつ所長

ちなみに日本の医療費は↓こんな感じ。
●盲腸手術:総額約60万円
●個室入院:一日3〜10万円
●ICU入院:一日8〜10万円
(出典2008年*2)

入院時の部屋代は個室1日3万円

病院の部屋代(1日あたり)
・個室1万円、一般病棟3000円(ジュネーブ、公立病院、2013年*4)
・個室1万円(ジュネーブ、私立病院、2013年*4)
・個室7万円、一般病棟5万円(ジュネーブ、2004年*3)
・個室8万円(グリンデルワルド、2004年*3)

 ※薬代、X線代、検査費は含まず

集中治療室(ICU/CCU)は1日20万円

集中治療室(ICU/CCU)の費用データ(1日の価格)
・15万円(ジュネーブ、公立病院、2013年*4)
・20万円(ジュネーブ、公立病院、2009年*5)

重大な事故に遭ったときなどは、↑この額が、毎日かかることになります。

その他の治療費用のデータと事例(300万円以下)

軽い治療に対しても、高額な医療費が必要です。少し医者に診てもらうだけで、数万円かかると覚えておきましょう。他の国と比較して、救急車が特に高いです。

外来初診料(ジュネーブ、2013年*4) 公立4千円
私立7千円
救急車の料金(ルガノ、2014年、下の体験談より) 10万円
救急車の料金(ジュネーブ、2004年*3) 6万円(公営)
入院保証金(ジュネーブ、2013年*4) 必要(金額は病院による)
アキレス腱断裂の手術費用(ジュネーブ、2013年*4) 公立25万円
私立50万円
急な腹痛で受診(ルガノ、2014年、下の体験談より) 6万円

↑以上の事例は300万円未満のもの。

スイスの医療制度と実際の病院体験談

スイスの医療事情として覚えておくべきポイントとしては、

●医療水準は高い
●物価が高いため医療費も高額
●病院によって金額がかなり違う
●スイスの医療費が高いので隣のドイツで受診する人もいる
●救急車が特に高額(数万〜10万円)
●登山を楽しむ人が多いからか、病気より圧倒的に「事故」が多い

という感じです。ネタ元も掲載しておきます。

6.在留邦人の皆さんへのお願い
(5) 医療
(イ) スイスは医療水準が比較的高く、各種医療設備が整っており、適切な医療が可能です。なお、緊急の場合を除き診療には予約が必要となります。…(省略)…なお、スイスでの治療費用は大変高額ですので、旅行者の方は海外旅行保険などに加入されることを強くお勧めします。

7.旅行者の皆さんへのお願い
(1) 海外傷害保険に加入しましょう
交通事故や病気などで入院した場合、高額な入院、治療費が必要(通常、入院1日で 3万円以上)となります。ストレッチャー(寝台)に乗ったまま帰国する場合、入院先から空港までの救急車代、航空運賃4人分(ストレッチャーは4席必要)、帰国の手続のため日本から家族等を呼び寄せる費用等莫大な経費が必要(数百―数千万円必要となる場合もある。)となります。

↓この方は、盲腸手術をしてトータル30万円強だった模様(2014年9月の記事)。ただし、この安い金額は、公立病院を利用されたっぽいですね。ホームドクターも利用されているので。私たち旅行者とは、少し状況が違うのかもしれません。

5月末、スイスに来て早々にまさかの虫垂炎で入院&手術をした私なのですが、…(省略)…そして、先週ついに手術代の請求が来ました。
虫垂炎関連では、
①ホームドクターにまずかかりエコーなどをして虫垂炎の診断をつけてもらい、
②その後ホームドクターが紹介してくれた大きな病院で手術と入院2泊、
③その後再びホームドクターで術後の経過のフォローと抜糸、
をしてもらいました。

まず、ホームドクター(①と③)の請求は7月末ごろに自宅に請求書が来ました。その請求、CHF 318.55。まずは自分で建て替えて、その後保険会社にお金を返してもらいます(この部分は現在保険会社にお願い中。)。そして先週、手術を受けた病院(②)からの請求が来ました。これは病院から直接ではなく、保険会社から請求が来ました。手術や入院にかかった費用は、全部でCHF 2965.25(約30万円強)。

↓こちらも上と同じブログからなのですが、スイスの医療費が高いので、隣のドイツまで歯医者にかかりに行った、という話。驚きですね。。。(2014年7月の記事)

でも物価が高いここスイスでは、歯医者さんの治療費も超高額!しかも普通の病院と違って、歯医者さんは保険がきかないので全額自己負担なのです。スイスの歯医者さんに虫歯治療3回通って、CHF 3000以上(30万円以上)かかった、というお友達の話を聞いたこともあるし、行く歯医者さんによって治療費がずいぶん異なるようなので、歯医者さん選びはかなり悩ましい問題(>_<)どうしようか…と思っていたら、主人が研究室の同僚から、ドイツの歯医者に行けばスイスに比べてずいぶん安いらしい、という情報を入手! …(省略)… 歯医者さんまでは電車を乗り継いで、自宅から約2時間くらいで到着するようです。運賃は往復で約CHF 30でした。 …(省略)… そして今日、2回目の予約日でした。…(省略)…そして昼ごろ主人帰宅。神経抜かなくてよかったよ~、今回で終わりだって!と晴れ晴れと帰ってきました。よかった~!しかもその場で請求書を出してくれたようで、計2回、虫歯一本削って薬を塗布して詰め物をする、という治療で、123.76ユーロ(約17000円)でした。これ、たぶんスイスで治療するよりはるかに安いのではないかな?と思います。

この治療費で問題ない治療が受けられたので、ドイツまで行く時間と運賃を考えても、行く価値はあるのではないかな~というのが私たち夫婦の感想でした。歯医者さんにかからずに過ごせるのが一番ですが、もし虫歯になってしまったら、こんな選択肢もありなんだな~と思いました。

↓こちらは食中毒っぽい急な腹痛で救急車を呼び、病院に搬送された人の体験談。(2014年7月の記事)

スイスだからさぞ高いのではと心配してたら、500スイスフラン(SF)(57,500円)でした。「やれやれ、これくらいで済んで良かった」と思ったら、「救急隊にきてもらいますからちょっとお待ち下さい」と、私を搬送して帰って行った救急隊に電話するのです。まさか、救急車が有料??? と待っていると、先ほどとは別の隊員2名が病院にやって来て、なんと850SF(97,750円)を請求されました。…(省略)…これもカードで払いました。こちらではハンディな無線でつながるカード読み取り装置があって、どこでもカード決済をすることが出来るのです。医療費と救急代と帰りのタクシー代40SF(4,600円)も入れると、合計1,390SF(159,850円)の出費になりました。後は帰国後、どこまでカードの保険がおりるかです。…(省略)…
★その後保険金は申請通り払ってもらえました。(SF:スイスフラン)
申請額:
病院代 500SF
救急車代 850SF
帰路のタクシー代 20SF 
合計1,370SF
受取額:
1,370SF×114.21=156,468円

スイスで山登りをされる方は、↓こういう部分も注意して、保険を選んでくださいね。

スイスでは、山岳事故等における行方不明者救助費用や緊急患者輸送費用は自己負担となり、その金額は非常に高額であり場合によっては一千万円を超えるケースもあります。このため、海外旅行保険等に加入する場合は、登山・ハイキング中の事故等にも適用されるかどうか確認することも重要です。

300万円以上の高額支払い事例

治療費用300万円以上の事例(医療搬送を含まないもの)

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
事故 ユングフラウヨッホのアイスパレス内(氷の床)で転倒。膝蓋骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2011年*1) 7日 526万円
事故 ハイキング中に足を滑らせ転倒。足首骨折。家族が駆けつけ る。 (2015年*1) 8日 413万円
事故 街で段差につまずき転倒。足首骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2012年*1) 9日 400万円
事故 スキー中に転倒し頭を強打。硬膜下血腫。手術。家族を呼び寄せ。(2011年*1) 8日 399万円
事故 ハイキング中に足を捻り転倒。足関節脱臼骨折。手術。(2014年*1) 9日 378万円

↓次に、さらに高額となる医療搬送が必要になったときの費用を見てみましょう。

スイスから日本へ移送費&実際の事例

医療搬送チャーター機イメージ

チャーター機での医療搬送は、1時間につき約80万円かかる*8

↓飛行機での医療搬送は、定期便か、チャーター便かで、かなり価格が変わります。

定期便利用の場合

合計 約450〜500万円
(2013年*4)
・移送費は利用する航空会社および時期で変わる
・付き添い医師1名、看護師1名
・座席を6~10席確保し、ストレッチャー利用
・定期便のメリットは、安いこと。
・デメリットは断られることもあること(感染症の疑いや、繁忙期など)

↑イギリスやフランスと比較しても200万円くらい高額です。

チャーター便利用の場合

合計 約2,160万円
・チャーター費用 約2,000万円(2011年*8)
・その他費用 約160万円
(その他費用の内訳)付添い医師1日20~40万円、付添い看護師1日約10万円、医療機材4万円、現地病院〜空港の車移送3~5万円、宿泊費用(遠路の場合)1人1泊1.5万円(以上、2009年*5)、成田空港〜都内病院の車移送 10~25万円(2013年*9)

・チャーター便のメリットは断られないこと。デメリットは高額であること。

ただし、各国の全データから見て「ヨーロッパからの医療搬送で、チャーター便はほとんど使われていない」ことがわかるので、ヨーロッパからの医療搬送は定期便で考えてよいのではないか、と私は思います。

スイスから日本への医療搬送の事例

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
事故 バスルームで転倒、腰を強打し救急車で搬送。腰椎破裂骨折。 家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2016年*1) 12日 1269万円
事故 バスルームで転倒、腰を強打し救急車で搬送。腰椎骨折。家族が 駆けつける。医師・看護師と医療搬送。 (2015年*1) 12日 1259万円
事故 スキー中に転倒しヘリコプターで搬送。脊髄損傷。手術。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(保険金額不足/別途自己負担あり)(2012年*1) 15日 1000万円
病気 夕食後左手が麻痺。脳内出血。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2006年*1) 11日 952万円
病気 ホテルで吐血し意識を失う。脳梗塞。現地病院から首都ベルンにヘリコプターで搬送、手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2008年*1) 13日 943万円
事故 観光中、アイスバーンで滑って転倒。大腿骨頸部骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2008年*1) 16日 837万円
病気 発熱・耳が聞こえなくなり受診。大葉性肺炎・中耳炎。家族が駆けつ ける。医師と医療搬送。 (2015年*1) 18日 701万円
事故 スキー場でリフトに乗る際、 金属の床が外れ3メートル落下。ヘリコプターで搬送。大腿骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。 (2015年*1) 10日 700万円
事故 ハイキング中に下り坂で転倒しヘリコプターで搬送。脛骨・腓骨骨折。手術。看護師と医療搬送。(2016年*1) 13日 688万円
事故 ツアーのバスから降りる際にめまいで転倒、翌日痛みがひどくなり救急車で搬送。大腿骨転子部骨折。手術。看護師と医療搬送。(2014年*1) 21日 656万円
病気 ユングフラウ登山後から呼吸困難・胸の痛みを訴え、移動後のフランスで受診。気胸。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2007年*1) 17日 578万円
事故 ハイキング中に足が滑り転倒。脛骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2012年*1) 12日 507万円
事故 足がもつれ転倒し顔を強打。鼻骨・歯骨折。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2012年*1) 7日 507万円
事故 路上で転倒し、かかとを強打。骨折。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。帰国後、手術を行う。(2008年*1) 5日 496万円
病気 ホテルで昼食後、胸が痛くなり意識を失い、ヘリコプターで標高の低い病院へ搬送。失神の診断。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2012年*1) 6日 493万円
病気 腹痛を訴え受診。卵巣のう腫。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2008年*1) 9日 457万円
事故 ゴルナグラート展望台で足が滑り転倒。足首の複雑骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2011年*1) 8日 449万円
事故 車から降りた際に転倒。手首・大腿骨頸部骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2010年*1) 15日 372万円

スイスから日本への医療搬送の費用が約450万円だとすると、それを差し引いた医療費の最高額は809万円。これが現在までのイギリスの医療費の最高額です。ということは、スイス滞在では、保険の「治療費用」の項目で800万円あれば安心と言えると思います。

結論として、最低でも、スイスで治療費用は600万円は欲しい。800万円あれば安心だと私は思います。

以上が、医療搬送のデータです。ただし、この医療搬送、利用するかどうかは自分で選べます。「医療搬送は自分には不要」と割り切れば、海外旅行保険の保険料を大幅に節約できます。

医療搬送が必要かどうかの判断=大幅な節約

スイスから日本への医療搬送は、定期便を利用した場合でも約450万もかかります。これはヨーロッパの中でも最高額。では、医療搬送は必ず必要なものなのでしょうか?

保険代理店に尋ねてみたところ「もちろん医療搬送も、やるかどうかは自分の判断(家族判断)になります」とのこと。では、医療搬送を希望する人というのは、どういう人で、どういう理由で希望するのでしょうか?

医療搬送はシニア層(65歳以上)が多い

ジェイアイ傷害火災が発表しているデータ(出典)によると、こんな事実が判明しています。

  • 300万円超の高額医療事故はシニア層(65歳以上)が約半数である
  • 2014年度 高額医療事故TOP5のうち4件がシニア(9,335万円〜1,888万円)

また、ジェイアイ傷害火災とエイチ・エス損保が公開している合計500件以上の事故事例(*1*7)を一つ一つ調査したところ、↓このような事実もわかってきました。

  • 1000万円超の高額医療事故73件のうち61件(84%)が医療搬送。
  • 医療搬送を病気に限定すると、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞など、シニアに起こりやすい病気が多い。

このように見ていくと、シニア層(65歳以上)であるかどうかによって、医療搬送の可能性は、かなり違うことがわかると思います。65歳未満の場合は、医療搬送の可能性は、かなり低いと言えると思います。

また、逆の面から見ると、医療搬送は本人(家族)の希望で行うものであることから、「シニア層が医療搬送を希望することが多い」とも言えます。

医療搬送では、チャーター便が特に高額なので、「チャーター便は利用しない」と決めるだけでも、必要な補償額は、かなり減ります(=保険料の節約になります)。

医療搬送を希望する人は、どういう理由で希望するのか?

本人(もしくは家族)の希望で行う医療搬送。日本への医療搬送を希望する理由は、どういうものなのでしょうか?調べてみたところ、3つの理由に集約できました。

日本への医療搬送を希望する人の3つの理由
1. コミュニケーションの不安
2. 現地の医療水準が不安
3. 金銭的な不安

↑これら3つの不安をクリアできるなら、保険料の節約のために「医療搬送は不要」と割りきってよいことになりますね。

「医療搬送は不要」と割りきったとき、どうすべきか

では、今度は、重要な、「高額な医療搬送を断るなら、どう対応したらいいか」という問題を考えてみましょう。上記の3つの不安それぞれに対して考えてみます。

1. 「コミュニケーションの不安」への対策

これに関しては、日本の海外旅行保険は通訳費用も負担してくれるので安心です。通訳がいれば、最低限の意思疎通は問題ないでしょう。日本と同レベルの「かゆいところに手が届く」ほどのサービスは望めないかもしれませんが、それは仕方ないと割り切るしかないでしょう。

2. 「現地の医療水準が不安」への対策

ここ最近、日本以外の国の医療水準は、急速に上がってきています。さらに言えば、ほとんどの国に、外国人や富裕層向けの、高額だが医療水準の高い「ビジネス病院」があるものです。海外旅行保険に加入している日本人旅行者は、ほとんど、こういう病院を利用することになります。ですので、現地の医療水準を、国全体や、その地域全体で考えてはいけません。

とは言っても、スイスは全体的に医療水準は高いです。在スイス日本国大使館のホームページにも、↓このように書かれています。

スイスは医療水準が比較的高く、各種医療設備が整っており、適切な医療が可能です。

バンコクの医療関係者の方で、医療搬送にも携わり、医療搬送の難しさと高額さをよく知っている方が、ブログ(2013年の記事)中で、↓こう書かれています。

そろそろ海外で罹災した日本人患者は何でもかんでも日本の医療機関だけを妄信するのはやめたほうがいいのでは?と言わせていただきます。韓国、バンコク、シンガポール、マレーシアのビジネス病院のレベルは、日本の総合病院と医療レベルにおいて遜色はなくなっていますし、サービスレベルで行くと日本よりもはや上になっています。…(省略)…従いまして、もし海外で不幸にも病気や怪我をした場合は、現地でも十分対忚できる医療機関があるかもしれないことを考て、そこからどこでどのように治療計画を立てるか柔軟に対忚するのが肝要かと思います。

ですので、スイスでは、医療レベルの不安はなく、現地で治療を続けるという選択肢も十分アリだと、私は考えます。

3. 「金銭的な不安」への対策

金銭的な不安というのは、具体的には、例えば、「集中治療室(ICU/CCU)の費用が一日数十万円かかるので支払いが大変。医療搬送の費用を払ってでも、早く保険の利く日本で治療を受けたい」というような場合です。

スイスの場合は、集中治療室(ICU/CCU)の費用が1日約20万円ほどと高いです。

これに対しては、また先程のバンコクの医療関係者の方のブログが参考になります。

日本以外の多くの国では、医療機関ごとに医療レベルの差、病院費用の差が存在しますので、患者や家族がどのレベルの病院で治療を受けるかという選択をしなければならなくなることがあります。

つまり、簡単に言えば、「病院のレベルを下げれば医療費も下げられる」ということです。高級ホテルのような病院をやめて、地元の人も利用するような普通の病院を利用するだけで、かなりの節約になるはずです。

ですので、保険会社に病院を手配してもらうときには、少し遠くても、医療費が比較的安い地区の病院をお願いする、というのも、一つの方法でしょう。

また、上で紹介した体験談のように、スイスでは医療費が高いので、ドイツまで治療に行く人もいます。スイス国内でも、自分が滞在する地区に近いところで、どこの病院が医療費が安いのかを調査しておくことも、自衛手段の一つとして大切です。

節約方法のまとめとしては、2つの選択肢、つまり「医療搬送をお願いして日本で治療」を選ぶか、それとも「医療搬送せずに、現地で病院のレベルを下げて治療続行」を選ぶか、よく考えて選択する、ということですね。

以上、3つの対策でした。

上の3つの対策を読んで、自分もできそうなら、「医療搬送必要なし」と割り切ることができるでしょう。無理そうなら、医療搬送になった場合も計算に入れて「救援者費用」の項目を多めに準備するようにしてください。

まとめ

スイスへ行くときの海外旅行保険は、

  • 治療費用は、最低600万円。800万円あれば安心です。
  • 救援者費用は、医療搬送不要なら200万円。医療搬送が必要なら650万円に。

「スイスの医療費は高額」と言われていますが、データを見ると、ヨーロッパの中で飛び抜けて高いわけではなく、イギリスやフランスと同レベルです(ドイツよりは高いですが)。

ただ、救急車代(1回10万円)と医療搬送(定期便利用)は、他国より高いので覚えておきましょう。

救援者費用に関して

医療搬送が不要の場合、救援者費用は200万円でいいでしょう。200万円あれば家族が日本から駆けつける費用分を支払えるからです。200万円という数字なら、年会費無料クレジットカード1枚でカバーできる額です。

ただし、医療搬送を必要と考えた場合は、救援者費用は650万円は必要です。650万円でしたら、保険付帯カード約4枚でカバーできます。

治療費用に関して

治療費用600万円という数字は、クレジットカード付帯保険でカバーするとなると、カード3枚で足りる額です(治療費用補償など死亡補償以外は、カードを複数持っていると、限度額が上乗せされます)。さすがに、この額だと、ゴールドカードでも1枚ではカバーできないことが多いので、やはり、保険付帯カードが最低2枚は必要になります。(参考:ゴールドカード比較表)。

3ヶ月以上の滞在の場合は、この治療費用の額を確保しようと思うと、カード付帯保険だけでは少し厳しいです。カード付帯保険で3ヶ月以上をカバーさせたい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。⇒90日以上の長期海外旅行保険もクレジットカードで[利用付帯裏技]

半年以上の滞在の場合は、有料保険を使うべきです。有料保険の節約方法は、こちらで紹介しています。⇒半年〜1年など長期海外旅行保険の節約方法3つ

参考にさせていただいた文献リスト

保険会社の皆様、貴重なデータの公表、ありがとうございました!
*1 ジェイアイ傷害火災HP 海外での事故例(2002~2016年)
*2 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2008年のデータ)
*3 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2004年のデータ)
*4 東京海上日動 世界の医療と安全2014年
*5 東京海上日動 世界の医療と安全2010年
*6 AIU 海外での盲腸手術の総費用2008年(AIU海外留学保険総合案内サイト)
*7 エイチ・エス損保 旅行先でのトラブル事例
*8 チャーター機の料金は、アークEFI航空情報センター 航空機チャーター事業部(参考料金一覧)を参考に「1時間80万円×2(往復)×日本までの飛行時間(google mapより)」で計算。
*9 ④搬送費用 先端医療情報サイト ハロードクター
*10 外務省 在外公館医務官情報 アメリカ合衆国(ニューヨーク) 4.衛生・医療事情一般

以下、参考にしたデータ・情報

現在の為替レート:1スイス・フラン=[rate_Exc amount=”1″ from=”CHF” to=”JPY”]円 (←googleからの自動取得値)

2013年 1スイス・フラン97〜115円
2009年9月7日 1スイス・フラン=約88円
2004年3月 1スイス・フラン=約85円