結論「カナダでは治療費用600万円は必要」

先に結論を書いておきたいと思います。

のむてつ所長のむてつ所長

カナダでは「疾病治療費用」「傷害治療費用」の補償額は、最低で600万円は欲しいところ。あと注意したいのは、医療費が高額になる医療搬送が必要となったとき(カナダ⇒日本は約400万円)。重病時に医療搬送を必要とするかどうかで、必要な「救援者費用」の額が変わります。(下で詳しく説明します)。

このページの目的

海外旅行保険は、本当に1年で20万円以上もする「保険金支無制限」のものが必要なのでしょうか?短期の保険なら、本当に、クレジットカード付帯の保険だけでは不足するのでしょうか?

このページでは、カナダの医療費の価格を実際に見て、海外旅行保険をどれくらい掛けておく必要があるか、クレジットカード付帯保険で対応可能なのか、それとも不足するのか、などについて検証します。

※東京海上日動やAIU、JI(ジェイアイ)傷害火災、HS損保などの保険会社が公表しているデータから、できるだけ客観的に見ていきたいと思います。(記事下に、すべての出典リンクを掲載)

まず大前提として

海外旅行保険を考えるときに、まず大前提として2点、頭に入れておいてください。

海外旅行保険の額を考えるときの大前提2つ

  1. 一番使う確率が高いのは「治療費用」。この額をメインに考えるべき。
  2. 高額医療費の原因のほとんどが医療搬送。なので「救援者費用」の額も重要

クレジットカードの宣伝でよくある「最大補償額●千万円!」というのは、実は利用確率の低い死亡補償の額だったりします。最大補償額が大きくても、あまり意味がありません。保険額を決めるのに重要なのは、「治療費用」と「救援者費用」です。覚えておいてくださいね。

判断基準

治療費用に関して↓

カナダで盲腸手術:約150万円

  • 全体的に、日本の2.5倍の医療費(日本の10割負担額と比較)
  • 病院の1日の部屋代: 個室30万円/日(*4)⇒20日間600万円

救援者費用に関して↓

医療搬送イメージ

  • 日本への医療搬送(定期便): 約400万円(*4*5)
  • 日本への医療搬送(チャーター便): 約1520万円(*8)

カナダの医療費の価格&実際の事例

手術費用(盲腸/虫垂炎)は総額約150万円

盲腸手術の費用データ

・16万円(バンクーバー、手術代のみ。公立病院、2013年*4)
・21万円(バンクーバー、手術代のみ。公立病院、2009年*5)
・150万円(バンクーバー、総費用。2008年*6)
・60万〜150万円(バンクーバー、総費用。2004年*3)

のむてつ所長のむてつ所長

ちなみに日本の医療費は↓こんな感じ。
●盲腸手術:総額約60万円
●個室入院:一日3〜10万円
●ICU入院:一日8〜10万円
(出典2008年*2)

入院時の部屋代は個室1日20万円

病院の部屋代(1日あたり)

・公立病院個室12万〜40万円
・公立病院セミ個室12万〜28万円
 (バンクーバー、2013年*4)
・公立病院個室15万〜51万円
・公立病院セミ個室15万〜51万円
 (バンクーバー、2009年*5)
・個室20万〜40万円
 (バンクーバー、2004年*3)

 ※薬代、X線代、検査費は含まず
 ※カナダには入院設備のある私立の総合病院がほとんどない*4

集中治療室(ICU/CCU)は、1日30万〜100万円

集中治療室(ICU/CCU)の費用データ(1日の価格)
・24万〜95万円(バンクーバー、公立病院、2013年*4)
・31〜123万円(バンクーバー、2008年*5)

重大な事故に遭ったときなどは、↑この額が、毎日かかることになります。

その他の治療費用のデータと事例(300万円以下)

医療費は全体的には日本と同じくらいなのですが、外来初診費が高いので注意が必要です。

外来初診料(バンクーバー、2013年*4) 公立12万円以下
救急車の料金(バンクーバー、2004年*3) 3万円+240円/マイル(公営)
入院保証金(バンクーバー、2013年*4) 必要(全病院の8割で約40万円。不要な病院もある)
アキレス腱断裂の手術費用(バンクーバー、2013年*4) 公立32万円
発疹で病院受診&治療。皮膚炎。(トロント、2009年*5) 1.5万円

↑以上の事例は300万円未満のもの。

カナダの医療制度と実際の病院体験談

カナダの医療事情として覚えておくべきポイントとしては、

●カナダ国民は医療費無料だが旅行者は対象外
●医療水準は高い
●医療費も高い
●入院費用は1日20万円以上
●医療費は大体1日9万〜18万円
●ER(救急医療)での診察は最低でも7万円かかる
●ERでも長い待ち時間は覚悟しておくべき
●旅行者は、医療費が高いが、すぐに診てもらえる民間医療機関(プライベートクリニック)で診てもらうことがが多い
●救急車は911
●811で無料で健康相談が可能
●911も811も「ジャパニーズ・プリーズ」と言えば通訳を通して話せる

という感じです。参照元も掲載しておきます。

一般的な医療水準は高く、臓器移植やがんについても最先端の治療が行われています…(省略)…カナダの医療制度はメディケアと呼ばれる国民皆保険制度を採用しており、コアとされる主たる医療については患者の自己負担が一切なく、全てを税財源で公的に負担しています。全ての国民は皆保険を取得できますが、移民の場合取得まで3ヶ月間、また留学生(ワーキングホリデイ含む)等は公的医療保険を取得できない州もあり、その場合、医療費は有料になります。…(省略)…高額な医療費請求に備えて、渡航前には旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。

当地での医療費は日本人の想像をはるかに超えた高額なものです。特に入院すれば一日当たり10万円から30万円(場合により50万円の例もある)もの経費がかかります。最近、病気入院した日本人旅行者に合計1000万円の請求が来た例もあります。自分は絶対大丈夫とは思わず、旅行の前には、是非とも海外旅行傷害保険などに入っておくことをお勧めします。

カナダ在住でない外国人旅行者が処置を受ける場合の費用は、日割り計算または症状と入院期間によって計算されます。処置費用は地域によって異なりますが、1日当たり1,000カナダドル〜2,000カナダドルです。

万が一病気や怪我でカナダの医療機関において治療・入院が必要となった場合、その費用は我々の想像をはるかに超えるほど高額なものになります。例えば、OHIP(オンタリオ州の健康保険)を持たない Visitor Visa / Student Visa / Working Holiday Visaでトロントに滞在中の方が、トロントの病院で入院すると4人部屋のベッド一床の使用料として一晩につき 2,500~3,500ドルかかります。…(省略)…3日入院するとベッドの使用料だけで約 100万円かかることになります。…(省略)…もちろん、怪我や病気の種類にもよりますが、 1週間の入院が必要なケースにおける医療費の合計が 50,000ドルを悠に越えることも少なくないでしょう。より身近な例を挙げますと、 OHIP(オンタリオ州の健康保険)無しで病院の救急室(Emergency Room)で診察してもらう場合、救急の受付をした時点ですでに 600ドル以上の医療費が発生します。診察・治療してもらう場合、さらに診察費、検査費、治療費が加算されますので、一回 ERで診察を受けたら(これも怪我や病気の種類や状態にもよるでしょうが)少なくとも 800ドル位の医療費が請求されることを覚悟しなければなりません。

緊急時には911に電話して救急車を呼ぶことができるが、その場合、救急医療隊員が最も適切と判断した病院に行くことになる。911に電話せず、自分で救急外来へ行けば、病院を選ぶことができる。また、緊急ではない場合には811に電話をかければ、24時間無料で健康相談をすることができる。911と811のどちらも、「ジャパニーズ・プリーズ」と言えば、通訳を通して話せる。

カナダでは、医療費が高額だというだけではなく、「医者に診てもらうまでに時間がかかる」ということも問題になっているようです。↓

カナダに短期間しか滞在しない人は、必要な時にウォークイン・クリニックに行くと良い。しかし予約を入れることはできず、待ち時間が長い場合が多いので注意が必要だ。

家庭医を持っていない患者さんが受診できるのはウォークインクリニック(注:ショッピングモールや街中にある簡易診療施設)ですが、常に混雑しており、オタワ市内の場合、数時間待ちが平均です。また、ウォークインクリニックには、レントゲン検査機器、簡易血液検査機器、超音波検査機器などの基本設備を設置していないところがほとんどです。

ウォークインクリニックの時間外・週末・重傷の場合は総合病院(公立)の救急外来(ER)を受診することになりますが、これもまた待ち時間が長い状況です。ERでの待ち時間については州の保健省のホームページなどで公開されていますが、これによると、オタワ病院の場合、患者10人中9人は、複雑症例で14.6時間、単純症例で5.2時間と表示されています。…(省略)…ERにおいては患者のトリアージ(ふるい分け)がトレーニングされた看護師によって行われており、命に関わる疾患については早めに治療が開始されますが、緊急性が無いと判断された疾患については後回しにするというシステムが徹底されており、上記のような待ち時間の状況となっています。
…(省略)…
しかし、近年、…(省略)…民間医療機関(プライベートクリニック、検査機関等)が一部の州で解禁されています。…(省略)…カナダの国民保険を有しない人々や、待ち時間を短縮したい富裕層にとって民間医療機関は有用であり、利用者が増えています。こうした施設では自己負担での医療が制限付きで(入院設備は伴わない等)行われていますが、いまだ数が少なく全体としては数パーセントを占めているにすぎないのが現状です。
…(省略)…
○ウォークインクリニックについて 
以下の特徴があります。健康診断等の検査・予防処置をしない。毎回、医師が異なる可能性がある(継続性がなく見落としの可能性があります)。診療時間が長く土日も営業しているところが多い(メリット)。若く経験の少ない医師の可能性がある(デメリット)。待ち時間が長い可能性がある

300万円以上の高額支払い事例

治療費用300万円以上の事例(医療搬送を含まないもの)

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
病気 発熱・呼吸困難で受診。肺炎。手術。家族を呼び寄せ。(2013年*1) 21日 1281万円
病気 急に胸が痛み救急車で搬送。狭心症。手術。家族を呼び寄せ。(2013年*1) 11日 668万円
事故 マウンテンバイクで走行中転倒。上腕骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2007年*1) 8日 623万円
病気 激しい腹痛で受診。腸閉塞。手術。家族を呼び寄せ。(2007年*1) 9日 600万円
事故 歩行中、意識を失い転倒、膝を強打し救急車で搬送。膝蓋骨骨折。手術。(2013年*1) 6日 584万円
事故 スキーで転倒し、両足を強打。脛骨・腓骨の骨折。手術。(保険金額不足/別途自己負担あり)(2008年*1) 6日 500万円
事故 ゴンドラ乗り場で転倒し腰と太ももを強打。大腿骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2011年*1) 7日 458万円
病気 腹痛・高熱で震えが止まらず救急車で搬送。胆嚢炎。手術。家族を呼び寄せ。(2014年*1) 6日 447万円
事故 スキー中に転倒し肘を強打。上腕骨の骨折。手術。(2009年*1) 3日 443万円
事故 自転車で走行中に転倒し救急車で搬送。硬膜下血腫・肩甲骨骨折。手術。(2014年*1) 27日 398万円
事故 雪の路面を散歩中に転倒。橈骨・大腿骨の骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2009年*1) 14日 393万円
事故 バス降車時に貧血で意識を失い転倒、救急車で搬送。頭蓋骨・下顎骨折。手術。(2014年*1) 3日 383万円
病気 背中と胸の苦しみで受診。気胸。手術。家族を呼び寄せ。(2012年*1) 10日 365万円
病気 強い腹痛を訴え救急車で搬送。憩室炎。家族を呼び寄せ。 (2015年*1) 5日 330万円
病気 40度の熱が10日間続き受診。肺炎。 (2015年*1) 10日 316万円
病気 胸の強い痛みを訴えヘリコプターで搬送。急性大動脈解離。家族を呼び寄せ。(2016年*1) 316万円

↓次に、さらに高額となる医療搬送が必要になったときの費用を見てみましょう。

カナダから日本へ移送費&実際の事例

医療搬送チャーター機イメージ

チャーター機での医療搬送は、1時間につき約80万円かかる*8

↓飛行機での医療搬送は、定期便か、チャーター便かで、かなり価格が変わります。

定期便利用の場合

合計 約359万〜438万円
(2013年*4)
・移送費は利用する航空会社および時期で変わる
・付き添い医師1名、看護師1名
・座席を6~10席確保し、ストレッチャー利用
・定期便のメリットは、安いこと。
・デメリットは断られることもあること(感染症の疑いや、繁忙期など)

チャーター便利用の場合

合計 約1,520万円
・チャーター費用 約1,360万円(バンクーバーから。2011年*8)
・その他費用 約160万円
(その他費用の内訳)付添い医師1日20~40万円、付添い看護師1日約10万円、医療機材4万円、現地病院〜空港の車移送3~5万円、宿泊費用(遠路の場合)1人1泊1.5万円(以上、2009年*5)、成田空港〜都内病院の車移送 10~25万円(2013年*9)

・チャーター便のメリットは断られないこと。デメリットは高額であること。

カナダから日本への医療搬送の事例

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
病気 意識が朦朧として救急車で搬送。脳幹梗塞。家族を呼び寄せ。医師・看護師とチャーター機で医療搬送。(2013年*1) 42日 7081万円
病気 口から泡を吹いて倒れ救急車で搬送。脳炎。家族を呼び寄せ。医師・看護師とチャーター機で医療搬送。(2016年*1) 19日 3890万円
病気 バンクーバー発の列車内で息苦しくなり、途中下車し救急車で搬送。急性冠症候群。現地病院からチャーター機でシアトルまで医療搬送し43日間入院・手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2012年*1) 43日 3700万円
病気 激しい腹痛・嘔吐で受診。腹膜炎・穿孔性憩室炎。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2007年*1) 11日 1360万円
病気 吐き気・腹痛で受診。腸閉塞。手術。看護師と医療搬送。(2006年*1) 16日 1013万円
病気 足の痛みと腫れで受診。化膿性膝関節炎。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2006年*1) 11日 877万円
事故 乗馬中に落馬し救急車で搬送。寛骨臼骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2016年*1) 13日 827万円
事故 階段を踏み外して転倒。大腿骨頸部骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2008年*1) 16日 788万円
病気 機内で腹痛。着陸後に受診。腸閉塞。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2006年*1) 9日 701万円
事故 水溜りで滑り転倒。大腿骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2011年*1) 11日 642万円
事故 空港内で転倒。大腿骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2009年*1) 17日 607万円
事故 トイレで転倒し救急車で搬送。大腿骨頸部骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2016年*1) 8日 594万円
事故 アイスホッケー中に転倒、頭部を強打し意識不明。頭部外傷・硬膜外血腫。手術。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2007年*1) 71日 524万円
事故 スノーボードの着地に失敗し足を強打。脛骨・腓骨の骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2007年*1) 5日 499万円
病気 腹痛・下痢で受診。虚血性大腸炎。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2006年*1) 4日 410万円
事故 ホテル玄関前が凍っており滑って転倒。大腿骨の骨折。手術。看護師と医療搬送。(2009年*1) 5日 395万円

チャーター機利用は超高額なので除外して考えると、

カナダから日本への定期便での医療搬送の費用が約400万円なので、それを差し引いた医療費の最高額は960万円、次が630万円。

医療搬送なしの保険金最高額が1300万円で、次が623万円。

以上から考えると、カナダ滞在では、保険の「治療費用」の項目で、最低600万円欲しい。1300万円あれば安心と言えると思います。

以上が、医療搬送のデータです。ただし、この医療搬送、利用するかどうかは自分で選べます。「医療搬送は自分には不要」と割り切れば、海外旅行保険の保険料を大幅に節約できます。

医療搬送が必要かどうかの判断=大幅な節約

カナダから日本への医療搬送は、定期便を利用した場合でも約400万もかかります。これはヨーロッパの中でも最高額。では、医療搬送は必ず必要なものなのでしょうか?

保険代理店に尋ねてみたところ「もちろん医療搬送も、やるかどうかは自分の判断(家族判断)になります」とのこと。では、医療搬送を希望する人というのは、どういう人で、どういう理由で希望するのでしょうか?

医療搬送はシニア層(65歳以上)が多い

ジェイアイ傷害火災が発表しているデータ(出典)によると、こんな事実が判明しています。

  • 300万円超の高額医療事故はシニア層(65歳以上)が約半数である
  • 2014年度 高額医療事故TOP5のうち4件がシニア(9,335万円〜1,888万円)

また、ジェイアイ傷害火災とエイチ・エス損保が公開している合計500件以上の事故事例(*1*7)を一つ一つ調査したところ、↓このような事実もわかってきました。

  • 1000万円超の高額医療事故73件のうち61件(84%)が医療搬送。
  • 医療搬送を病気に限定すると、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞など、シニアに起こりやすい病気が多い。

このように見ていくと、シニア層(65歳以上)であるかどうかによって、医療搬送の可能性は、かなり違うことがわかると思います。65歳未満の場合は、医療搬送の可能性は、かなり低いと言えると思います。

また、逆の面から見ると、医療搬送は本人(家族)の希望で行うものであることから、「シニア層が医療搬送を希望することが多い」とも言えます。

医療搬送では、チャーター便が特に高額なので、「チャーター便は利用しない」と決めるだけでも、必要な補償額は、かなり減ります(=保険料の節約になります)。

医療搬送を希望する人は、どういう理由で希望するのか?

本人(もしくは家族)の希望で行う医療搬送。日本への医療搬送を希望する理由は、どういうものなのでしょうか?調べてみたところ、3つの理由に集約できました。

日本への医療搬送を希望する人の3つの理由
1. コミュニケーションの不安
2. 現地の医療水準が不安
3. 金銭的な不安

↑これら3つの不安をクリアできるなら、保険料の節約のために「医療搬送は不要」と割りきってよいことになりますね。

「医療搬送は不要」と割りきったとき、どうすべきか

では、今度は、重要な、「高額な医療搬送を断るなら、どう対応したらいいか」という問題を考えてみましょう。上記の3つの不安それぞれに対して考えてみます。

1. 「コミュニケーションの不安」への対策

これに関しては、日本の海外旅行保険は通訳費用も負担してくれるので安心です。通訳がいれば、最低限の意思疎通は問題ないでしょう。日本と同レベルの「かゆいところに手が届く」ほどのサービスは望めないかもしれませんが、それは仕方ないと割り切るしかないでしょう。

2. 「現地の医療水準が不安」への対策

カナダは全体的に医療水準は高いです。在フランクフルト日本国大使館のホームページにも、↓このように書かれています。

一般的な医療水準は高く、臓器移植やがんについても最先端の治療が行われています

そして、バンコクの医療関係者の方で、医療搬送にも携わり、医療搬送の難しさと高額さをよく知っている方が、ブログ(2013年の記事)中で、↓こう書かれています。

そろそろ海外で罹災した日本人患者は何でもかんでも日本の医療機関だけを妄信するのはやめたほうがいいのでは?と言わせていただきます。韓国、バンコク、シンガポール、マレーシアのビジネス病院のレベルは、日本の総合病院と医療レベルにおいて遜色はなくなっていますし、サービスレベルで行くと日本よりもはや上になっています。…(省略)…従いまして、もし海外で不幸にも病気や怪我をした場合は、現地でも十分対忚できる医療機関があるかもしれないことを考て、そこからどこでどのように治療計画を立てるか柔軟に対忚するのが肝要かと思います。

ですので、カナダでは医療レベルの不安はなく、現地で治療を続けるという選択肢も十分アリだと、私は考えます。

3. 「金銭的な不安」への対策

金銭的な不安というのは、具体的には、例えば、「集中治療室(ICU/CCU)の費用が一日数十万円かかるので支払いが大変。医療搬送の費用を払ってでも、早く保険の利く日本で治療を受けたい」というような場合です。

まさにカナダの場合は、集中治療室(ICU/CCU)の費用が1日30万~100万円かかるので、このケースに当てはまります。

これに対しては、また先程のバンコクの医療関係者の方のブログが参考になります。

日本以外の多くの国では、医療機関ごとに医療レベルの差、病院費用の差が存在しますので、患者や家族がどのレベルの病院で治療を受けるかという選択をしなければならなくなることがあります。

つまり、簡単に言えば、「病院のレベルを下げれば医療費も下げられる」ということです。高級ホテルのような病院をやめて、地元の人も利用するような普通の病院を利用するだけで、かなりの節約になるはずです。

また、物価の高い大都市の病院ではなく、少し遠くても、医療費が比較的安い地区の病院をお願いする、というのも一つの手でしょう。

カナダと同様、医療費の高いスイスでは、ドイツまで治療に行く人もいます。医療費の高いアメリカでも、自分が滞在する地区に近いところで、どこの病院が医療費が安いのかを調査しておくことも、自衛手段の一つとして大切です。

節約方法のまとめとしては、2つの選択肢、つまり「医療搬送をお願いして日本で治療」を選ぶか、それとも「医療搬送せずに、現地で病院のレベルを下げて治療続行」を選ぶか、よく考えて選択する、ということですね。

以上、3つの対策でした。

上の3つの対策を読んで、自分もできそうなら、「医療搬送必要なし」と割り切ることができるでしょう。無理そうなら、医療搬送になった場合も計算に入れて「救援者費用」の項目を多めに準備するようにしてください。

まとめ

カナダへ行くときの海外旅行保険は、

  • 治療費用は、最低600万円。1300万円あれば安心です。
  • 救援者費用は、医療搬送不要なら200万円。医療搬送が必要なら600万円に。

カナダの医療費は、やはり高いです。病院にかかるときは注意が必要です。

救援者費用に関して

医療搬送が不要の場合、救援者費用は200万円でいいでしょう。200万円あれば家族が日本から駆けつける費用分を支払えるからです。200万円という数字なら、年会費無料クレジットカード1枚でカバーできる額です。

ただし、医療搬送を必要と考えた場合は、救援者費用は600万円は必要です。チャーター便利用も考えると1500万円以上欲しいところ。600万円でしたら保険付帯カード約3枚でカバーできますが、1500万円となると、有料の海外旅行保険を使わないと難しいです。

治療費用に関して

治療費用600万円という数字は、クレジットカード付帯保険でカバーするとなると、カード3枚が必要な額です(治療費用補償など死亡補償以外は、カードを複数持っていると、限度額が上乗せされます)。さすがに、この額ではゴールドカードでも1枚ではカバーできないことが多いので、やはり、保険付帯カードが最低2枚は必要になります。(参考:ゴールドカード比較表)。

3ヶ月以上の滞在の場合は、この治療費用の額を確保しようと思うと、カード付帯保険だけでは少し厳しいです。カード付帯保険で3ヶ月以上をカバーさせたい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。⇒90日以上の長期海外旅行保険もクレジットカードで[利用付帯裏技]

半年以上の滞在の場合は、有料保険を使うべきです。有料保険の節約方法は、こちらで紹介しています。⇒半年〜1年など長期海外旅行保険の節約方法3つ

参考にさせていただいた文献リスト

保険会社の皆様、貴重なデータの公表、ありがとうございました!
*1 ジェイアイ傷害火災HP 海外での事故例(2002~2016年)
*2 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2008年のデータ)
*3 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2004年のデータ)
*4 東京海上日動 世界の医療と安全2014年
*5 東京海上日動 世界の医療と安全2010年
*6 AIU 海外での盲腸手術の総費用2008年(AIU海外留学保険総合案内サイト)
*7 エイチ・エス損保 旅行先でのトラブル事例
*8 チャーター機の料金は、アークEFI航空情報センター 航空機チャーター事業部(参考料金一覧)を参考に「1時間80万円×2(往復)×日本までの飛行時間(google mapより)」で計算。
*9 ④搬送費用 先端医療情報サイト ハロードクター
*10 外務省 在外公館医務官情報 アメリカ合衆国(ニューヨーク) 4.衛生・医療事情一般

以下、参考にしたデータ・情報

現在の為替レート:1カナダ・ドル=[rate_Exc amount=”1″ from=”CAD” to=”JPY”]円 (←googleからの自動取得値)

2013年 1カナダ・ドル92〜97円くらい
2009年9月7日 1カナダ・ドル=約86円
2008年2月 1カナダ・ドル=約105円〜110円
2004年3月 1カナダ・ドル=約82円